連続更新2日目、とするつもりでしたが、結局空白期間ができてしまうこのザマよ。
本日もお疲れ様です。
大河です。
昨日篠さんとFGOガチャイプしたらイシュタ凛引いたのでガチャイプ教信仰します。ただし溶けた金額は聞かないでほしい。本当に。
本日の感想は2年以上前の本ですね。何故そんな時期の漫画の感想を今さらまとめるのかと言いますと、書籍感想文に関しては、うちのブログを読んでくれているであろう人に読んで欲しい本を宣伝する意図がそこそこあるので、やっぱり語り合う仲間を増やしたいわけです。そんな感じ。
本文は続きからどうぞ。
本日もお疲れ様です。
大河です。
昨日篠さんとFGOガチャイプしたらイシュタ凛引いたのでガチャイプ教信仰します。ただし溶けた金額は聞かないでほしい。本当に。
本日の感想は2年以上前の本ですね。何故そんな時期の漫画の感想を今さらまとめるのかと言いますと、書籍感想文に関しては、うちのブログを読んでくれているであろう人に読んで欲しい本を宣伝する意図がそこそこあるので、やっぱり語り合う仲間を増やしたいわけです。そんな感じ。
本文は続きからどうぞ。
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成績、お金、恋人、友達、いつも何かが足りない気がする中学2年生女子のちーちゃんとナツ。2人はクラスメイトに助けられながらも、普通の日々を送っていた。そんなある日、事件は起きた。
(wikipediaより一部引用:ちーちゃんはちょっと足りない)
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阿部共実といえば、特徴的な絵柄と特徴的な内容でたびたび話題になる作家さんですね。デビュー作の「破壊症候群」からしてインパクトあるわなアレは。
そんな作家が生み出したコイツは、なんとまぁ『2015年このマンガがすごい!オンナ編』第1位を受賞しておりました。当時は「面白い冗談だな」って本当に思いました。だって意味が分からないですからね。オトコ編らしからぬ作品かもしれないけれど、オンナ編としてもどうかと思うというか、そもそもこれは賞をもらってはいけない類の作品じゃないかなと考えているので。
そんな作品がどんな内容かと言いますと、
「発達障害の少女に依存する内向的女子」
の物語です。
この表現だけで既に楽しそうな気配がぷんぷんしますね。しますよね?
登場人物を紹介していきましょう。
ちーちゃん;南山千恵
|身体も行動も幼い中学二年生。
|ナツとは小学校から、旭とは中学校からの付き合い。
|「ちょっと足りない」ながらも日々を送っていたが、悪気なく、とある事件を起こす。
小林ナツ
|千恵の幼馴染。
|内向的で気弱、空気は読めず、自己主張ができない。
|周囲の人間に強いコンプレックスを抱いているが、自身を変える努力はしない。
旭
|千恵とナツの友人、成績優秀で恋人もいる。
|口下手で無愛想だが、悪いことを悪いと断じることができる誠実さを持つ。
依存される「足りない」少女がちーちゃんで、依存する内向的少女がナツです。
ちーちゃんはちょっと足りない、と題に発達障害少女ちーちゃんの名前を冠しながら、しかし実質この物語は彼女の幼馴染ナツが主人公です。作中で綴られる心理描写は、すべてナツのものですから、これを主人公と呼ばずして、誰を主人公と呼ぼうかという話。
さて、そんな主人公ナツ。
事件を通して描かれるのは、ナツのクズ具合。
けれど、読者は「こいつどうしようもねえな」と吐き捨てられない。
ナツに共感できるからです。
では、作中でどういった事件が起きたのかについて触れていきます。
ちーちゃんは、普段からとても仲良くしてくれているナツに、何か恩返しがしたいと考えるようになります。しかし「ちょっと足りない」ちーちゃんにできる恩返しなどそう簡単に見つかるものではありません。
そんな中、バスケ部連中の3000円がなくなる事件が発生します。ちーちゃんが疑われますが、旭が「そんなことはありえない」と怒り、ナツも同意。別れて帰宅、ナツとちーちゃん二人きりの場面。
得意げなちーちゃんが取り出す。
金。
3000円。
「ナツにやる」と言う。
悪意のない、純真そのままの笑顔で。
誰の金か、ナツは分かっている。分かっている。だってさっき聞いたから。なくなったって。
「二人だけの秘密だよ」
受け取る。
ナツは知っているのです。常識くらいは弁えているから、人のお金を盗むのは悪いことだということも、盗んだなら謝らなければいけないことも、ナツは知っているのです。
それでも、金を受け取る。
「私たちは、足りないのだから」
「ちょっとくらいは恵まれたって、いいだろう」
そんな自己肯定。
結局金を盗んだ犯人はちーちゃんだと判明しますが、誰に渡したのか、つまり、ナツのことは明らかにはなりません。けれど、行動と態度で、旭は「ナツがちーちゃんから金を受け取った上、その事実を隠蔽しようとした」ことに見当がつき、同時にナツも気付かれたことに気付きます。
そうして破綻していく。崩れていく。
明確に言葉にしたわけではない、けれど、黙っていればいるほどに、関係は失われていく。
旭は別の友を作り、ナツの周囲には誰もいなくなる。私はクズだからどうしようもないんだと何度も呟き、足りない奴には幸福になることなどできないのだと吐き捨て、自分を変えようともせずに、酷い結末に嘆く自分を、屑だから仕方ないのだと繰り返す。皆変わっていく中で、ナツだけが、ずっとそのまま。
でもナツは諦めきれない。同じ「足りない」人間として、ずっと一緒にいた、ちーちゃんだけは、いなくなるなんて耐えられない。でも、いなくなってしまう。いなくなってしまったと思った。
最後の展開。
いつものように、ナツのもとへ、ちーちゃんは駆け寄ってくる。
ちーちゃんは変わらない。ちーちゃんは私みたいな屑でも受け入れてくれる。
ちーちゃんは変わっていっているけれど、でも、きっと変わらずに、私と友達でいてくれるはずだ。
「私たち、ずっと友達だよね?」というナツの問いに、ちーちゃんは「うん」と返す。ちーちゃんにとっては言葉通りの意味でしかなく、ナツにとっては、言葉通りだけれど、言葉以上の意味を持った、その重い問い。分かっている、ナツはちーちゃんが問いの重さを理解していないことを分かっている。それでも尋ねなければいけなかった、尋ねなければちーちゃんを失う不安で押し潰されてしまう。
涙を浮かべながら、ちーちゃんの名前を呼ぶナツ。
満面の笑みで、ナツの名前を呼ぶちーちゃん。
どうしようもない救われ方で、漫画は終わりを迎えるのです。
ナツは自身でも語るように、どうしようもなく屑です。ですが、その行動のすべてを、馬鹿な奴だ、罪深い奴だと断じてしまえない。何故ならば、自身を屑だと叫びながら、現実から逃避した経験が実際にあるから。
すべき物事から逃げ出し、苦痛から目を背け、逃げ出した経験があるから。
いつか現実に向き合わなくてはいけないし、逃げ続けて訪れる幸福なんてない。ずっとこのままでいることなんて、絶対に出来やしない。分かっている、分かっているのです。読者はもちろん、ナツだって、察している。けれど、それでも行動しない。変わりたくない。変われない。今のままでいたい。だって、今のままで肯定してくれる人がいる。
絶望的なハッピーエンド。
真っ暗な未来しか見えない終幕。
だからこの漫画は、こんなにも心を揺さぶる。
先のない現在に留まり続けようとする、誰の心にもある黒い感情を、描いているから。
ナツに共感できてしまうから。
彼女の未来が、想像できてしまうから。
……。
…………。
この感想文を書いている間に三回くらい辛くなりましたが、ようやく書ききったので投下します。
是非読んでみて下さい。
是非とも。
大河でした。
成績、お金、恋人、友達、いつも何かが足りない気がする中学2年生女子のちーちゃんとナツ。2人はクラスメイトに助けられながらも、普通の日々を送っていた。そんなある日、事件は起きた。
(wikipediaより一部引用:ちーちゃんはちょっと足りない)
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阿部共実といえば、特徴的な絵柄と特徴的な内容でたびたび話題になる作家さんですね。デビュー作の「破壊症候群」からしてインパクトあるわなアレは。
そんな作家が生み出したコイツは、なんとまぁ『2015年このマンガがすごい!オンナ編』第1位を受賞しておりました。当時は「面白い冗談だな」って本当に思いました。だって意味が分からないですからね。オトコ編らしからぬ作品かもしれないけれど、オンナ編としてもどうかと思うというか、そもそもこれは賞をもらってはいけない類の作品じゃないかなと考えているので。
そんな作品がどんな内容かと言いますと、
「発達障害の少女に依存する内向的女子」
の物語です。
この表現だけで既に楽しそうな気配がぷんぷんしますね。しますよね?
登場人物を紹介していきましょう。
ちーちゃん;南山千恵
|身体も行動も幼い中学二年生。
|ナツとは小学校から、旭とは中学校からの付き合い。
|「ちょっと足りない」ながらも日々を送っていたが、悪気なく、とある事件を起こす。
小林ナツ
|千恵の幼馴染。
|内向的で気弱、空気は読めず、自己主張ができない。
|周囲の人間に強いコンプレックスを抱いているが、自身を変える努力はしない。
旭
|千恵とナツの友人、成績優秀で恋人もいる。
|口下手で無愛想だが、悪いことを悪いと断じることができる誠実さを持つ。
依存される「足りない」少女がちーちゃんで、依存する内向的少女がナツです。
ちーちゃんはちょっと足りない、と題に発達障害少女ちーちゃんの名前を冠しながら、しかし実質この物語は彼女の幼馴染ナツが主人公です。作中で綴られる心理描写は、すべてナツのものですから、これを主人公と呼ばずして、誰を主人公と呼ぼうかという話。
さて、そんな主人公ナツ。
事件を通して描かれるのは、ナツのクズ具合。
けれど、読者は「こいつどうしようもねえな」と吐き捨てられない。
ナツに共感できるからです。
では、作中でどういった事件が起きたのかについて触れていきます。
ちーちゃんは、普段からとても仲良くしてくれているナツに、何か恩返しがしたいと考えるようになります。しかし「ちょっと足りない」ちーちゃんにできる恩返しなどそう簡単に見つかるものではありません。
そんな中、バスケ部連中の3000円がなくなる事件が発生します。ちーちゃんが疑われますが、旭が「そんなことはありえない」と怒り、ナツも同意。別れて帰宅、ナツとちーちゃん二人きりの場面。
得意げなちーちゃんが取り出す。
金。
3000円。
「ナツにやる」と言う。
悪意のない、純真そのままの笑顔で。
誰の金か、ナツは分かっている。分かっている。だってさっき聞いたから。なくなったって。
「二人だけの秘密だよ」
受け取る。
ナツは知っているのです。常識くらいは弁えているから、人のお金を盗むのは悪いことだということも、盗んだなら謝らなければいけないことも、ナツは知っているのです。
それでも、金を受け取る。
「私たちは、足りないのだから」
「ちょっとくらいは恵まれたって、いいだろう」
そんな自己肯定。
結局金を盗んだ犯人はちーちゃんだと判明しますが、誰に渡したのか、つまり、ナツのことは明らかにはなりません。けれど、行動と態度で、旭は「ナツがちーちゃんから金を受け取った上、その事実を隠蔽しようとした」ことに見当がつき、同時にナツも気付かれたことに気付きます。
そうして破綻していく。崩れていく。
明確に言葉にしたわけではない、けれど、黙っていればいるほどに、関係は失われていく。
旭は別の友を作り、ナツの周囲には誰もいなくなる。私はクズだからどうしようもないんだと何度も呟き、足りない奴には幸福になることなどできないのだと吐き捨て、自分を変えようともせずに、酷い結末に嘆く自分を、屑だから仕方ないのだと繰り返す。皆変わっていく中で、ナツだけが、ずっとそのまま。
でもナツは諦めきれない。同じ「足りない」人間として、ずっと一緒にいた、ちーちゃんだけは、いなくなるなんて耐えられない。でも、いなくなってしまう。いなくなってしまったと思った。
最後の展開。
いつものように、ナツのもとへ、ちーちゃんは駆け寄ってくる。
ちーちゃんは変わらない。ちーちゃんは私みたいな屑でも受け入れてくれる。
ちーちゃんは変わっていっているけれど、でも、きっと変わらずに、私と友達でいてくれるはずだ。
「私たち、ずっと友達だよね?」というナツの問いに、ちーちゃんは「うん」と返す。ちーちゃんにとっては言葉通りの意味でしかなく、ナツにとっては、言葉通りだけれど、言葉以上の意味を持った、その重い問い。分かっている、ナツはちーちゃんが問いの重さを理解していないことを分かっている。それでも尋ねなければいけなかった、尋ねなければちーちゃんを失う不安で押し潰されてしまう。
涙を浮かべながら、ちーちゃんの名前を呼ぶナツ。
満面の笑みで、ナツの名前を呼ぶちーちゃん。
どうしようもない救われ方で、漫画は終わりを迎えるのです。
ナツは自身でも語るように、どうしようもなく屑です。ですが、その行動のすべてを、馬鹿な奴だ、罪深い奴だと断じてしまえない。何故ならば、自身を屑だと叫びながら、現実から逃避した経験が実際にあるから。
すべき物事から逃げ出し、苦痛から目を背け、逃げ出した経験があるから。
いつか現実に向き合わなくてはいけないし、逃げ続けて訪れる幸福なんてない。ずっとこのままでいることなんて、絶対に出来やしない。分かっている、分かっているのです。読者はもちろん、ナツだって、察している。けれど、それでも行動しない。変わりたくない。変われない。今のままでいたい。だって、今のままで肯定してくれる人がいる。
絶望的なハッピーエンド。
真っ暗な未来しか見えない終幕。
だからこの漫画は、こんなにも心を揺さぶる。
先のない現在に留まり続けようとする、誰の心にもある黒い感情を、描いているから。
ナツに共感できてしまうから。
彼女の未来が、想像できてしまうから。
……。
…………。
この感想文を書いている間に三回くらい辛くなりましたが、ようやく書ききったので投下します。
是非読んでみて下さい。
是非とも。
大河でした。